こんにちは竜也です。読んでいただいて、ありが湯ございます。
蔵王温泉といえば、極上の硫黄泉で知られる温泉地です。蔵王温泉の湯量は非常に豊富で、共同湯も宿の湯も全て源泉かけ流しで提供されています。(高温のため加水あり)
「蔵王の温泉にはずれ無し」これこそが、蔵王のすごいところなのですが、その中でも特に温泉通をうならせる施設を紹介したいと思います。
この時は、3泊の旅行で、越後湯沢の単純温泉に入ってから、湯田川温泉のアルカリのとろとろ硫化塩泉を楽しんで、旅の締めに蔵王のこの温泉を求めに来ました。
まさに、最後の締めに相応しい一湯でした。
・2022年9月26日訪問
かわらやは、足元から湧き出る蔵王で一番フレッシュな温泉
今回紹介するのは、蔵王温泉のかわらや すのこの湯です。かわらやは、蔵王温泉街のメインストリート高湯通りを少し外れたところにあります。
目の前には広い駐車場があり、その先に建物が見えてきます。建物はかなりきれいです。
この、かわらやは、以前は「河原屋旅館」として営業されていたのが、温泉のみの共同浴場として2011年からリニューアルオープンした施設です。蔵王温泉には旅館が所有している温泉を除く、蔵王温泉宿泊者が無料で入ることができる3つのレトロな共同湯(非宿泊者は200円)と、その他に3つの温泉施設があります。かわらやは、後者の施設のうちの一つになります。
それぞれの共同浴場をリストアップしておきます。
公共の共同湯
- 上湯:源泉に近いフレッシュな湯を提供
- 下湯:3つの源泉の混合栓、白濁して硫黄感を感じやすい
- 川原湯:本ブログで紹介
温泉施設
- かわらや すのこの湯:本ブログで紹介
- 湯の花茶屋 新左衛門の湯;スーパー銭湯的な施設。休憩エリアや洗い場が充実
- 蔵王温泉 大露天風呂:とにかく巨大。洗い場、シャワーはなし。
それぞれ特徴があり魅力的なのですが、今回はその中でもお湯の鮮度で「かわらや」を選びました。
施設に入って、料金を支払います。入浴料は大人500円、子供300円です。後で紹介しますが、小さな湯船の施設なので、それなりの金額に感じますが、クオリティから考えると全然ありです。受付の方は優しい感じで初めての方でも入りやすいです。
料金を支払って、中に入ると広々としたスペースになっており、休憩できるテーブルなどもあります。こちらとは別に休憩室を有料で提供していたり、日によって食事も提供しているようです。
脱衣所には、ドライヤーなどはなく、頭を乾かしたかったらこちらでドライヤーを貸りて乾かすようになっています。脱衣所があまり広くないので、長く人がたまらないようにしたり、硫黄成分で電子機器が壊れないようにするための配慮かもしれないですね。
さあ、早速温泉に入ります。私が温泉に向かうタイミングで、ちょうど男性が一人出てきました。もしやこれは…。
はい、独泉です!極上湯を一人でいただけてしまいました。決して広い湯船ではないので人がいないと気を使わなくていいので最高ですね。
脱衣室の先に写真の通りの浴室があります。名前の「かわらや すのこの湯」の通り、お湯の下がすのこになっています!下から湯が湧き出ている…!
お湯は、うっすら緑がかっていますが、透明です。そうなのです、蔵王温泉のお湯は白濁していることが多いのですが、こちらのかわらやの湯は透明なのですよ。なぜか?これは成分が他の源泉と違うからではなく「鮮度」によるものです。
温泉に色が付く場合の多くは、温泉の成分が空気に触れることで、化学反応を起こすことによります。かわらのゆについては、空気に触れることなく下からどんどん新鮮な温泉が湧き出てくるので、化学反応を起こす前の温泉が常時提供されているわけです。
この鮮度を求めて、全国から足元湧出泉マニアが集まってくるのですよ。
洗い場は、温泉がある浴室の無効に扉があって、扉の向こう側に隔離された形で用意されています。洗い場スペースは2つのみです。今回、私はひとりで利用できたため悠々と使えましたが、スキーシーズンや土日祝日など混雑していると、洗い場が少なくて大変なことになります。以前、私がスキーシーズンで訪れた時は混雑がすごくて、洗い場を利用するのを諦めてサッと湯船に浸かって(それも、ぎゅうぎゅうで…)帰ってきました。
ということで、じっくりお湯を楽しみたかったら、できるかぎりオフシーズンに来ることをおすすめします。
かわらやの洗い場
かわらやの泉質は、河原湯や上湯とどう違うの?
まずは蔵王温泉の泉質からおさらい
冒頭でも触れましたが、「蔵王温泉のお湯にはずれなし」です。全てのお湯が素晴らしい。蔵王温泉の泉質は、湧出箇所によって多少の違いはありますが、ベースとなる泉質は多むね一緒です。泉質名でいうと、「酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉」になります。
かわらのゆでは、泉質分析表が見当たらなかったので、すぐとなりの共同湯の川原湯の泉質分析表をこちらにご紹介します。「かわらや」もこちらとほぼ同じ湯でしょう。
川原湯、泉質分析表
溶存物質量は1kgあたり約2300mg、うち特に目立つのが硫化水素(硫黄成分)と、硫酸イオンです。硫酸塩泉としての効果がかなり期待できそうです。
ざっと効果がありそうな主力の成分を列挙すると
- 硫黄 :アトピーや、湿疹など皮膚関連のに効果的
- 硫酸イオン:きりきず、末梢循環障害、皮膚乾燥症などやっぱり皮膚関連
- 塩化物泉:温まりやすい(免疫アップ)
- アルミニウム:粘膜や肌の回復、眼病
全体的に、肌に良い成分が多いです。ph1.9とかなり強い酸性泉なのですが、美肌成分であるメタケイ酸も200mg近くあり、かなり優れた美肌の湯と行って良いでしょう。おかげで、酸性が強い割に、肌のあたりが良いです。
そういえば、以前こちらに伺った時に、常連の方がこちらに夏入るとひどいあせもがあっという間に治るんだと言っていました。やはり皮膚の不調に効果てきめんのようです。
また、他にも、カルシウム、マグネシウム、鉄、遊離二酸化炭素など、豊富な成分のオンパレードで、蔵王はあらゆる成分を含んだスペシャルな泉質であることが分かります。日本の宝ですね。
蔵王の温泉は、成分の比率の違いはあれど、全体的に似たような傾向があり、各源泉による成分上の差は泉質名が変わるほどの極端な違いはない印象です。
かわらやと、上湯、下湯、旅館のお湯との違い
温泉の泉質そのものは大きく変わらないということは、「かわらや」の湯の特徴は、やはり足元湧出によって、空気との接触による化学反応が起きていない鮮度の高さと言えます。
蔵王の3つある公共の共同湯の中では、比較的源泉に近く鮮度がよいのが「上湯」になるのですが、実際に入って比べてみるとわかるのですが、湯の質が「かわらゆ」とは明らかに異なります。さっぱりフレッシュなのです。もちろん見た目の透明度も全然違います。これが、源泉から距離がある「下湯」や、「新左衛門の湯」、各種旅館の温泉と比べると、その差は歴然です。同じ泉質分類の温泉とは思えない違いです。
もともと足元湧出の温泉自体が非常にレアなのですが、酸性硫黄泉で足元湧出となると更にレア度が上がります。がっつり酸性硫黄のお湯になると、青森県の酸ヶ湯温泉にある「熱乃湯」や、栃木県の奥塩原温泉の「むじなの湯」が思いつきますが、本当にレアです。このお湯を求めてわざわざ蔵王温泉まで行く価値があります。そのくらい希少度が高い。
「かわらや」と「河原湯」。紛らわしいけど何が違うの?
ところで「かわらや」に入ろうと思うと、すぐ下に共同湯の「川原湯」があることに気がつくと思います。こちらは、蔵王温泉の旅館に宿泊していれば無料で入ることができる公共施設になります。宿泊していない人でも200円で入ることができます。
川原湯共同浴場の入り口はこんな感じ
さて、この川原湯共同湯ですが、すぐとなりということでほぼ同じ源泉を利用しているのですが「かわらゆ」と何が違うのでしょうか。こちらも足元から湧いてきた源泉を利用しています。浴槽にはすのこもあって、「かわらや」とそっくりです。写真を御覧ください。
これ、相当なマニアじゃないと、どちらが「かわらや」でどちらが「河原湯」か見分けがつかないですよねw
どちらも「すのこ」のある温泉でそっくりです。
川原湯は、井戸水で上から加水している
川原湯共同浴場ですが、写真を見ると分かる通り、井戸水で上から水を注いで加水しています。源泉が湧いてくると熱すぎるんですよね…。あれ?ということは「かわらや」は加水なしの100%源泉かけ流し?それなら、かわらやの圧勝!
ちょっと、待ってください、同じように熱いお湯が湧いてきているはずなので、それだと「かわらや」の浴槽は激熱になってしまいます。そうです、わかりにくいだけでおそらく「かわらや」も加水されております…。たぶん、浴槽の下から加水しています。
100%源泉かけ流し派にしてみると残念ですが、私たちが普通に入浴できる温度の湯にするためには仕方がないですね。「川原湯」の井戸水の投入量を見ると分かりますがそこまで多量ではないので、全然源泉の質は確保できているレベルです。「かわらや」も同様でしょう。
川原湯は、足元湧出線ではない?
はい、川原湯の写真をよく見てください。
すのこが足元だけではなく、なんと横にもあります。ということは、足元だけではなく、横からも湧出しています。厳密に足元湧出線ではない…?側面湧出?
それだけ?別によくない?
はい。別にいいですね…。ということで、オチを行ってしまうと、「かわらや」でも「川原湯」でも、ほぼ同じクオリティの温泉が楽しめてしまいます。
一応フォローしておくと、「かわらや」の方が加水が浴槽の外から見えず、足元から湧いてくるお湯の感じと、湯船全体にお湯がオーバーフローしていく感じが味わい深いですね。
川原湯に比べて「かわらゆ」の強みは、休憩スペースや脱衣所、洗い場などの施設が充実しているということが第一に挙げられます。あとは、川原湯よりも混雑しにくい点でしょうか。
川原湯は、公共の湯なので利用者の多い少ないで経営に影響はないと思いますが、「かわらや」は民間の施設なので、私たちが足を向けるかどうかで存続にも影響します。なので、できれば、どちらか悩んだら「かわらや」さんの方に行ってあげましょう。なんだかんだシャワーがあると便利ですしね。
足元湧出じゃない、他の蔵王温泉のお湯に価値はないのか
さて、温泉マニアにとって足元湧出の温泉は何物にも代えがたい価値があるので、「かわらや」は飛び抜けた魅力があります。
…が、そうなると他の蔵王の温泉は魅力が落ちるのか?そんなことはありません。そもそも、先述したような成分豊富な源泉かけ流しの湯がどこでも楽しめる温泉地というのはそうあるものではなく、それ自体大変貴重です。さらに、他の施設や宿では以下の2つチャンスがあります。
100%源泉かけ流しにこだわるなら
やはり、加水はいやだ。100%源泉かけ流しにこだわりたい!そういう人は、加水なしにこだわったお湯を求めに行くのが良いでしょう。残念ながら、3つの共同湯「川原湯」「上湯」「下湯」すべて井戸水による加水があるようですので、加水が嫌な場合は、加水なしの温泉を提供している湯守のいる宿の湯を目指す必要があります。私が泊まったことのある宿ですと…
- 五感の宿 つるや
- 和歌(うた)の宿 わかまつや
この2つは、加水なしの100%源泉かけ流しをこだわって提供しています。
私の好みでは、内湯は「つるや」、露天は「わかまつや」が好きですね。
「つるや」さんは、現在も立ち寄り湯もやっているようです。バスターミナルの目の前なので立地も便利ですね。「わかまつや」さんは、現在は立ち寄り湯は停止しているようです。
ゆもみされることで逆に味わいが出る
フレッシュな温泉が一番良いとは限りません。ワインの熟成のように、空気に触れて味わいが出るということもあります。例えば、源泉から多少距離があり時間をおいたほうが、浴槽は白くなり、湯の花も舞います。その方が、味わい深くて良い!という派の人も少なくないと思います。一般的に、距離と時間が立ったほうが湯のあたりは柔らかくなります。
例えば、福島の岳温泉では、源泉から温泉街まで8kmの距離を流れることで湯もみされ、酸性泉なのに硫黄成分が落とされて柔らかい肌触りになる不思議な泉質になっており、その泉質のファンも多いです。私も入ってみましたが、うん、とても良かった。不思議な浴感の酸性泉でした。
ということで、空気に触れることで味わえる蔵王の泉質の魅力もせっかくなので楽しんでもらいたいです。
こちらも、先程紹介した
- 五感の宿 つるや
- 和歌(うた)の宿 わかまつや
が、源泉から距離があって、おすすめです。
ということで、蔵王に来たら「かわらや、川原湯の足元湧出のフレッシュな温泉」と、「湯もみされた加水なし源泉100%の温泉」の2種類をぜひとも楽しんでみてください。
今日も良い温泉を、ありが湯ございました!
蔵王はいいぞ。
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