こんにちは。竜也です。読んでいただいて、ありが湯ございます。
前日の金谷リゾート箱根に続いて、泊まりたかった宿の梯子です。
今回は、塔ノ沢温泉 – 元湯 環翠楼さんです。400年の歴史を持つ超老舗の旅館になります。環翠楼のすぐ近くにある同じ塔ノ沢温泉の福住楼さんには以前宿泊したことがあるのですが、環翠楼はずーっと泊まりたいと思っていて伸び伸びになっていたんですね。今回、よい部屋が空いていたので初めての訪問になります。
・2022年9月20日宿泊
塔ノ沢温泉エリアまでのアクセス
塔ノ沢エリアですが、場所は箱根湯本から少しだけ上部のエリアになり、先ほど挙げた福住楼と、こちらの環翠楼という老舗の宿2つを抱える、箱根でも歴史の深いエリアになります。
私は、前日は仙石原の金谷リゾート箱根に泊まっていたので、送迎で強羅駅まで送ってもらい、そのまま登山鉄道で箱根湯本に降りて環翠楼のチェックインの時間までのんびりと時間を過ごしました。
当日は台風の影響で強い雨が降ったりやんだりを繰り返しているので、屋内で過ごすしかありませんでした。
ということで、駅前のルノアールでパソコン作業をしながらのんびり。こちらからは、箱根湯元の富士屋ホテルに向かってかけられている「あじさい橋」を写真のようにきれいに見ることができます。
チェックインに近い14:00過ぎになったら、箱根湯本から塔ノ沢の環翠楼に向かいます。環翠楼までは良い時間にバスも走っておらず、基本的には徒歩かタクシーを利用することになると思います。
徒歩で15分程度の距離ですので全然歩いていけるのですが、この日は台風の影響で雨と風が強くタクシーを使ってサクッと運んでもらいました。
元湯 環翠楼にチェックイン。施設はこんな感じ
環翠楼に到着。登録有形文化財。歴史を感じる館内が素晴らしい
タクシーを利用して環翠楼に到着です。
15:00のチェックインまで時間がありましたが、早めに宿に入らせてもらい待たせてもらいました。環翠楼は、オープンスペース的な感じで、応接室に居心地の良いソファーがあるので、チェックイン前、チェックアウト後もゆったりすることができます。早く到着して居場所がない!みたいなことがないのでこれはすごく良いですね。
それにしても、素晴らしい建築です。環翠楼は登録有形文化財に指定されているだけあって、とにかく美しい。国の登録有形文化財になっているのは、大正期につくられた本館北棟、本館南棟、明治期の建築を移築した環翠楼別館の3棟になります。歴史のある宿ということですが、たしかに年季は入っているのですが床も柱もピカピカに磨き上げられていてすごくきれいです。宿自体の歴史でいうと、明治に作られた同じ塔ノ沢の福住楼の方が、400年の歴史がある環翠楼より若いのですが、環翠楼の方が建物自体は新しく感じました。環翠楼の建物は明治期に作られているからですかね。この2つの宿の建築を比べてみるだけでもとても楽しいです。
環翠楼という名前も、伊藤博文によって贈られた名前のようです。多くの文人、政治家などの要人に愛されてきた宿です。どちらかというと、隣の福住楼は、文人の贔屓が多く、こちらの環翠楼は政治家や実業家の贔屓が多かったっぽいですね。それぞれ好みがあるようで面白いです。
ということで、見てください。この美しい建物を。これだけで環翠楼に泊まる価値あります。
昭和に新聞、雑誌を席巻した漫画集団も環翠楼を定宿にしていたそうで、彼らの描いた漫画が額でいくつも飾られています。
環翠楼の部屋の様子
チェックインを完了して、部屋に入ります。
今回宿泊したのは、渓流側の客室露天風呂付きの「あじさい」という部屋です。渓流側で、お風呂付きの部屋は人気なので、空いていてラッキーということですかさず予約を入れました。一人での宿泊だと最大で二人用の小さい部屋しか宿泊できない宿が多いのですが、環翠楼は一人でも、露天風呂付きのこのような部屋に宿泊させてもらえます。お一人様利用に優しいお宿なのです。
一人で使うには十分です。独泉は嬉しいですね。温泉の泉質については後述。
部屋については、歴史的な建物にも関わらずトイレや水回りなどは、しっかりリフォームされていて快適さを損なわないように手入れされています。Wifiも高速で快適です。私の泊まった「あじさい」は渓流に近く眺望、雰囲気もよく大変快適に滞在できました。
環翠楼の温泉について詳しく
塔ノ峰温泉の歴史と泉質
さて、肝心の温泉です。箱根については、現在現在20箇所の温泉が存在しています。まずは箱根17湯。
箱根湯本温泉、塔之沢温泉、宮ノ下温泉、堂ヶ島温泉、 底倉温泉、木賀温泉、芦之湯温泉、大平温泉、小涌谷温泉、強羅温泉、宮城野温泉、二ノ平温泉、仙石原温泉、姥子温泉、湯ノ花沢温泉、蛸川温泉、芦ノ湖温泉。
そこに、近年、大涌谷温泉、湖尻温泉、早雲山温泉が追加されて、箱根20湯となっています。
今回泊まっている環翠楼は、そのなかでも塔ノ沢温泉というエリアに属します。塔ノ沢温泉は、慶長9年(1604年)に開かれた温泉です。当時、弾誓上人が塔ノ峰の山中の岩屋で修行を行っている最中に温泉を発見して、その温泉を病人の療養に利用したのが始まりと言われています。箱根20湯にはさらに歴史の長い温泉も多く、今から400年以上も前であっても箱根の中では比較的歴史の浅い温泉になります。例えば、一番古い温泉ですと、湯本温泉で721年から748年の間に発見されたそうです。奈良時代ですね。歴史が古い!
私自身は、箱根外輪山を何回か登山(縦走)して弾誓上人が修行した塔ノ峰も何度か登ったことがあるのですが、その前の明神ヶ岳や、金時山などと違って樹木も多く、かなり地味なピーク(山頂)の記憶があります。山深く修行に適した場所だったのでしょう。
環翠楼の泉質
塔ノ沢の泉質については、江戸の前期に水戸光圀とともに塔ノ沢を訪れた儒学の朱舜水が、塔ノ沢の泉質に驚き感動して、中国の明の時代に最も優れた評価の温泉地であった驪山(りざん)に勝る!ということから、勝驪山(しょうりざん)と名付けたという逸話もあります。
その朱舜水を感動させた泉質は、現在の泉質分類では、「アルカリ性単純温泉」になります。典型的な「MTMM(無色透明無味無臭)」と呼ばれる温泉で、さらりとした透明な泉質です。
泉質分析表から成分をみると、成分が多いものは、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、若干の炭酸水素イオンになります。phは8.9と、しっかりとしたアルカリ性の温泉です。
溶存物質の合計成分が1,000mgを超えないので、単純温泉という分類になっていますが、泉質としてはナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉が薄くなったものと考えてよいでしょう。
塩分が豊富なので、しっとり温まりやすい温泉で、温まりの湯ですね。さらに硫酸塩泉の要素もありますので動脈硬化予防や、保温効果、カルシウムも含まれていることから鎮静作用があるため、切り傷や、やけどなどとも相性がよいでしょう。
また、単純温泉で成分が濃すぎないため湯疲れが起こりにくく、長時間もしくは一日に何度も楽しめる温泉になっています。
環翠楼には、大浴場、貸し切り露天風呂、貸し切りの内湯、部屋風呂とありますが全てこの泉質のお湯を提供していると思われます。
さて、環翠楼の湯使いですが、分析表の記載を拝見すると、加水はなしで掛け流されていますが、源泉温度が48度とそこまで高くないので、温泉の加温があるのと(おそらく寒い季節のみ)、消毒処理を行っている旨が書かれています。その意味では、かけ流しの温泉ではあるものの、定義として100%源泉かけ流しというわけではなさそうです。ちょっと残念。
ただ、源泉温度が高くないことから、湧き出して比較的すぐのフレッシュな温泉が提供されていると思われます。これ、ポイント高いです。
実際にそれぞれの浴槽で入浴してみましたが、まさに無色透明無味無臭でかつ成分が濃すぎないさっぱりしたお湯です。温度はそこそこ熱めで身体に染み渡る感じです。41度くらいですかね。ところで入ってみた感じで、これ…薬剤本当に入れてるのかな?少なくとも塩素臭は全くありませんでした。清掃の時や宿泊者が多いときとか限定?ちょっと分からないですね。
言われなかったら、薬剤の投入を感じない、非常に気持ち良いフレッシュな温泉としか思えないです。いいお湯です。ざっと見、湯の花はありませんでした。
ちなみに、環翠楼のような無色透明無味無臭な泉質は、よく言えばだれでも楽しめる癖のない温泉なのですが、悪く言えば温泉慣れしていない人には普通のお湯に感じてしまう特徴を感じないお湯でもあります。よく、宿の口コミでこういう宿は「特徴のないお湯だった。イマイチ。」みたいに、温泉の何たるかが分かっていない人に書かれてしまう不遇な湯でもあります。いやいや、良い温泉だよ!塔ノ沢温泉。
私は、硫黄臭たっぷりのにごり湯も、塔ノ沢温泉のような透明なお湯もどちらも好きなので、満足な泉質なのですが、「硫黄臭い、濁っている、湯の花プカプカ」みたいなものを温泉に期待していると好みが分かれるところですね。
ちなみに、しっかり塩分が入っているので、単純温泉とはいえ、入浴後は、水道水のお風呂とは比較にならないほど温まりが持続しますよ。
メインのお風呂「大正風呂」
さて、温泉の浴場の紹介です。
まずは、メインとなる大浴場「大正風呂」です。タイルがとにかく味わい深い。また。男女が時間で入れ替わるようになっていて、一つは岩に囲まれた岩風呂になっていて、もう一箇所はギリシャ風?みたな感じの作りになっています。源泉に一番近いのは、この「大正風呂」のようで、フレッシュな温泉にこだわる人はこちらの温泉に行くのが良いでしょう。
浴槽は、どちらも同じような感じですね。私が入った時は、全然人がいなくて独泉状態でした。そこまで混雑することはなさそうに感じます。浴槽もそれぞれ2つあるので悠々と入れますね。
風情がある露天風呂(貸し切り)
次に、露天風呂です。
露天風呂については、宿の庭から階段を登って少し歩いたところにあります。夜だとちょっとドキドキしますね。写真の通りかなり風流な細い道を進んでいくと露天風呂に行き着きます。足元には注意です。
露天風呂は、事前の予約は不要で、入浴時に入り口の札を「入浴中」に変えることで貸切状態で楽しめるようになっています。
露天風呂には、洗い場はありませんので、「大正風呂」かもう一つの内湯の貸切風呂で身体をきれいにしてから浸かりに行くとよいかなと思います。
明るくて寝湯もできる貸し切りの内風呂
次が、内湯の貸切風呂です。こちらは照明が明るく現代的。寝湯もできます!
しっかりシャワーも洗い場もあるので、こちらではゆっくり身体や頭を洗うことができます。お湯はもちろん温泉です。
こちらも事前の予約は不要で、利用の際は貸し切り中の札をひっくり返して入浴します。
環翠楼は、貸切風呂の時間指定が不要で、時間を気にすることがなければ空いている時にパッと入れるので便利ですね。宿泊者が多くて混雑しているタイミングは空きにくいかもしれませんが。
環翠楼の夕食 – 美味しいものを少しずつ
さて、お楽しみの夕食です。環翠楼の夕食は部屋食なんです!ひと目を気にせずリラックスして食べられるのは嬉しいですね。
さっそく紹介していきます。
落ち着いているけど、一品一品手が混んでいます。
全部で12皿でてきます。正直なところ、全体的に、ものすごくインパクトがあるメニューは少ないのですが、落ち着いているけど手が込んでいるタイプの料理が多くて美味しいです。
皿の数は多いのですが、一皿一皿そこまで量が多くないのと、油っこくないので、旅館やホテルの食事でありがちな胃もたれが起きませんでした。でも品数が多いので満足感はあります。
大食いの人には若干物足りないと感じるかもしれませんが、このくらいだと翌日が辛くないので朝食を美味しく食べることができます。
私は前日、金谷リゾート箱根で、こってり和洋折衷のフレンチを食べたあとだったのですが、12皿、ペロリといただくことができました。二泊目の宿としてはとても良いですね。
夕食の水準は、かなり高いです。
環翠楼の朝食 – 定番の旅館の朝食
環翠楼の朝食です。朝食も夕食と同じく部屋食です。
朝食は、写真の通り、ザ・旅館の朝食という感じですね。
箱根だけあって、やはり干物がついてきます。こちらも全体的に派手さはないのですが普通に美味しい。そこまで変わった朝食ではないのですが、その中でも一つ光るものとして、茶碗蒸しが、画像だとわからないのですが鶏肉や銀杏など具がボリューミーで美味しいです。満足感があります。
夕食の手の混んだ感じに比べると、それ以外は比較的普通かな。
でも、朝はこのくらいが良いのですよね。
総評 – 箱根エリアではコスパが高いです
宿泊した感想としては、大変満足度が高いです。食事、温泉、接客、なにより建築の素晴らしさとすべての面において、そつがなく、しかも東京からだとアクセスも大変便利で、仕事で疲れた心身をサクッと癒やされに行くのに素晴らしい宿です。昔の著名人が贔屓にしていたのも分かりますね。
今回、私は部屋風呂(部屋温泉)付きの部屋に泊まりましたが、箱根は全体的に宿の価格帯が高い中で、部屋の温泉付きでかつ一人で宿泊できる宿、そしてあらゆるサービス面を考慮すると割安な宿だと思います。これは定宿にしたくなる。
どうしても塔ノ沢エリアだと、すぐ近くの福住楼と比較をしてしまいたくなるのですが、私の評価としては、設備などの利便性だと環翠楼に軍配があがると思います。環翠楼は、基本的に各部屋にトイレがありますが、福住楼はトイレが基本共用なんですよね。大浴場も環翠楼の方が広いです。
その代わり、福住楼は建物が環翠楼以上に年代物で味があったり、食事で特別懐石があったり、温泉も非常に味がある作りになっていたり、100%源泉かけ流しだったり、ちょっとマニア向けな要素も多いのですよね。この二軒の有形文化財の旅館を比較すると楽しいです。
ということで、塔ノ沢温泉の誇る有形文化財の宿をぜひ楽しんでみてください。
今日も良い温泉を、ありが湯ございました!
箱根はいいぞ。
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